Columbia(MPA) to Cambridge(MBA)

コロンビア大学(SIPA)、ケンブリッジ大学(MBA)の留学体験記です

マイケル・サンデルとJapan trip

私は、簡単な質問について深く議論するのが好きだ。「今日は、お金で買えないものは何かについて議論したい」

 

そういうと、サンデル教授は、テレビでもおなじみのように、椅子から立ち上がり、ゆっくりと歩き回りながら、議論を開始した。

 

 昨日、コロンビア大学から徒歩1分、家から徒歩2分の場所にある場所で、マイケル・サンデル教授の講演があると聞いたので、飛び込みで行ってきた。完全にミーハー魂。

 

①全体の雰囲気

  • 日本の東大で講演した時はすごい人気と聞いたが、こちらは席が少し余っていたので、そこまででもないのかと思ったり。
  • ただ、講演後に最初に質問した人が、「先生の本を読んで考えが変わりました!」と熱心に言っていたので、ミーハーな人は一定層いる模様。
  • ちなみにタダ(お金で買う必要がないもの)。

 

②議論の内容

 

「お金で買えないものは何か?」がテーマ。「Waht Money Can't buy」という新著の内容のお披露目だったと思われる。(自分は読んでないので分からない。以下、本の内容と齟齬があれば、聞き間違いなので、指摘して頂けると助かります)

 

  • アミューズメント施設で、本来は並ぶべきところを、お金を払うことで、並ぶ時間をカットすることができる場合があるが、なぜ許されるのか。
  • 国会審議はwalk-inでしか傍聴できない。しかし、ロビー活動家が、お金を払って人を雇い、その列に並ばせて、場所を確保することは許されるのか。

 

といったイントロで、お客さんの脳みそを、回転させ始める。そして、

 

  • イヌイットに割当られた「セイウチ」を殺す権利を、大物ハンターに売ることは許されるのか。割当を売ることで、イヌイットは割当を売却した収入を使ってより豊な暮らしをすることができる。

 

という疑問を提示して、聴衆を議論に巻き込み始めた。

 

  • 豊かな暮らしができるのであれば、問題ないという意見から、
  • カナダ政府が割当で許可したのは、「イヌイットがセイウチを使って生活してきた伝統を保護すること」であって、「狩り」そのものではない、という反対意見まで、

幅広く議論がでた。賛成・反対は半分ずつぐらい。(時間がなくて、あまり議論をまとめてきれていない感じがした)

 

次に、

  • 命の危険を伴う仕事も含めて、現在では、労働の多くは労働市場で調達される。労働市場では国籍等を規制するのは反対される。なのに、なぜ、軍隊は国籍の縛りがあり、労働市場で調達(民間会社と短期契約することを想定)することに多くの人は反感を感じるのか。皆さんの意見は?

というテーマで再度、意見を聞く。今回は、ほぼ全員が反対。

  • 「軍人には国家への忠誠が必要だから」などの意見が多数

そして、サンデル自身が、

  • 「軍隊」のように多くの人が、市場の対象となることに反感を感じるものがある。
  • 市場の対象となると、それは共通善ではなくタダの商品となってしまう。(もののの性質が変わる)
  • 市場が席巻すること(お金で変えるものが増えること)の問題は、①貧富の差が決定的に生活に大きな影響を与えてしまうこと、②「腐敗」と思えることが横行してしまうことだ

ということを指摘して、終了。

 

時間もなく、やや尻切れトンボな感じもあるが、詳細は本を読めということなのだと想像。

 

②個人的な感想

  • 中身も刺激を受けたが、サンデル教授の、「君の言いたいのは〜ということか。」と論点を明確化し、「この意見に反対のものは?」と、反対意見を述べさせ、争点を明確化させていくファシリテート技術が圧巻だった。
  • 今、政治系の授業では週に2時間、ディスカッションの時間があるが、そんなファシテーターがいるはずもなく、「君の意見いいいね。僕の意見は・・・」と、お互いに意見をいいっぱなしになってしまうことが多く、このサンデルの講演に比べれると、「考えさせれること」「刺激を受けるレベル」が格段に違う。
  • どうしたら、あんなにテンションがあがる、学びの多い議論を作れるのだろうか。
  • あの技術こそ、役所とか政治家とかが身につけるべき、技術な気がする。
  • 自分は、そんな言いっぱなしの意見も言えてないことが当面は課題だったりするが。

 

③Japan trip

  • 「軍人」でも「イヌイット」の議論でも争点になっているのは、コミュニティ(イヌイットのセイウチ狩り)や「国家への帰属意識」(軍隊の例)のようなお金の売買にそぐわないと考えるものが売買されることの是非だった。
  • 実は今、Japan tripといって、外人に日本を案内して回るツアーを企画し始めている。
  • このツアーの究極の目的も本来は、日本を日本足らしめている何かを、参加者に感じてもらい、(あわよくば)好きになってもらうことが目的のはず。
  • でも、実際に出来ることは、京都で観光したり、東京で企業や政治家の話を聞いたりと、出来ることは限られているし、場所によっては、お金も取りざるを得ない。
  • ただ、日本を離れて過ごす留学生が感じている「日本」を精一杯表現し、参加した人が、日本にポテンシャルを感じる旅にしたいとは思った。
  • Japan trip、お金は取るけど、提供できる価値はプライスレス。