Columbia(MPA) to Cambridge(MBA)

コロンビア大学(SIPA)、ケンブリッジ大学(MBA)の留学体験記です

社会人の修学旅行(Japan Trip)

「あれ、ラーメンを音を立てて食べられない。どうやったら音が出るの?」 

 

京都の初日の夜、ラーメンを食べているときに聞かれた言葉。この言葉に象徴されるように、「今までと違う視点の獲得」「今まで忘れかけていた視点の再確認」をJapan Tripを通して得た気がする。

 

ロジステックの都合上等の理由で、全ての行程に参加できなかったが、自分が主に担当した東北部分について、自分なりに学んだこと、感じたことをまとめたい。

 

※ブログ自体はざっくりしているので、奇特にも、詳細で聞きたいことがある方がいれば、個別に御連絡ください。

 

 

>全体的な感想

【リーダーシップ】

  • 良くJapan Tripは日本人がリーダーシップを発揮しやすい機会だと言われているが、これは間違いない事実だと思う。
  • SIPAで、日本人に他の多国籍の人がフォローしている姿は見たことがないので、いかに特殊な環境が分かる。
  • と同時に、日本人が国際社会でインパクトを出したいなら、日本が世界に提供できる価値を常に考えて、その橋渡しをするポジションにいることが重要であるのかな?と改めて考えさせられた。

 

【日本を見る視点】

  • 今回のTripでは、「母国の日本に帰った」という感覚が乏しかった。
  • 何となく覚えたての日本語を話し、京都の各地のような文化的なものから、六本木ヒルズのようなものまで、物珍しそうに見て、気仙沼では日本食を美味しそうに平らげる参加者を見て、日本は日本で特徴のある魅力的な国なのかな?と思えた。
  • ただ、その言語的・文化的な特徴が魅力であると同時に、海外の人が訪問する際の障壁となっているのも間違いがないので、今後、日本の訪問者、しいては定住者を増やしていくためには、自分達オーガナイザーが提供したような「橋渡し」となる機関・情報がもっと必要であるとも感じる。

 

【同じ釜の飯を食う】

  • 今回のトリップでは参加者同士、オーガナイザーと参加者も殆ど初対面に近い人が多かったが、トリップ終了後の今では、参加者の一人がNYで打ち上げをやろうと言ってくれたり、自分のFBのニュースフィールドが参加者同士で撮った写真や、お互いの友達申請で、埋め尽くされているような状況になるくらい、仲良くなっている。
  • 1週間でここまで仲良くなるのははっきり言って、脅威的であるが、これはまさに「同じ釜の飯を食う」経験をしたからであるように思う。
  • 思い返せば、中高で一番関係が続いてるのは1週間の合宿を5年連続で経験した同期だし、大学で一番仲がいいのは合宿を経験したサークルの仲間であるが、そういった「同じ釜の飯を食う」経験が重要であることが、日本だけでなく国際的にも重要であるのかな?ということを感じた。
  • これは、新しいチームビルディングする際等に、留意すべき点であると思う。

 

>東北について

①全体的な設計思想

  • 被害の大きな部分を単に見せても、被害の大きさが伝わっても、それ以上のものが伝わらないと考えた。そこで、SIPAの学生が人生を考えるか、その後のキャリア等で学ぶものがある機会にしたいと考える。
  • 立場によって視点が異なるので、少しでも異なる視点から話を聞けることを意識。
  • ただ、女川では町全体のvisitをうまくコーディネートして下さる方がいたので、実際の見学と講演をうまく組み合わせた内容となる。
  • また、単にこちらが話を聞くだでなく、講演者同士が話を聞ける等、講演者にも少しでもメリットがあるようにする。
  • 結果として、初日は社会起業家(Asuiku&WiA)の話を聞き、その後、女川町の訪問。二日目は午前中に陸前高田副市長、午後に民間企業の方(気仙沼ニッティンググ、斉吉商店、八木澤商店)とメディアの方(東海新報社)からパネル方式で同時に話を聞く、という形式となった。(パネル形式としたものの、自分の力不足もあり、結果としては講演×4に近い内容だった)

 

WiA&Asuiku

【事業紹介】

  • WiAは、東北地方で復興に向けて取り組む社会的企業に投資をする社会的投資ファンド
  • Asikuはその投資先の一つ。
  • 被災地を中心に、十分な教育機会がない子供への支援を行っている。
  • 基本はオンライン(すらら)システムとオフラインの組み合わせ。
  • オンラインでは、「体積の求め方」等の問題が、分かり易い形で提示されていて、生徒は順番にその問題を解いていく。ボランティアを中心とするスタッフは、生徒の進捗管理であったり、モチベーション維持を行う。
  • 教育機会に恵まれない子供は、十分な授業料を払えないことが多いが、オンラインで主な授業を行うことで、安い授業料でも多くの生徒を集めることができ、それで一定の収入を上げる仕組みになっているとのこと。

【感想】

  • 参加者の質問からは、具体的に収益を上げている方法の突っ込んだ方法や、成果の計測方法についての具体的な方法を問う質問があった。
  • また、講演者のバックグラウンドを問う質問も。
  • 参加者の中には、途上国開発等に興味を持つ人もおり、この仕組み自体、途上国開発の文脈でも通用しうる可能性があるので、具体的な質問が多くあったのではないかと感じている。また、起業というある意味リスクを伴う生き方に対して、どのようなことを今までしてきた人なのか、興味をもったのではないかと思われる。
  • 福島で政府だけで何かインパクト出すことの限界を感じた身としては、興味ある分野なので、もっと知見を深めていきたい。

 

女川町訪問

  •  高政という蒲鉾工場、復興商店街、復興PR館、冷凍工場マスカー、そして女川町役場で復興計画についてのレクチャーと盛りだくさん。
  • 現場とレクチャーがうまく組み合わさったことで、非常に立体的に女川のことが理解出来た気がする。
  • ただ、まだまだ理解できていない部分や見切れてない部分もあるので、是非、再訪したい。
  • 女川町で復興が早く進んでいる理由として「住民の利害対立が少ない被害の受け方」という外部要因と「住民集会等、住民との対話を重視している点」という内部要因を上げていた点も興味を引いた。
  • 福島でも次に向けての動作をうまく起こせているのは、この両方かどちらかを満たしている地域である気がしており、ある程度普遍性のある視点なのではないかと感じる。

 

陸前高田副市長

  • 主に復興計画について、説明を受ける。
  • 「inlcusiveness」というスローガンを掲げ、お年寄りや障害をもった方、海外の方にも住み易い町にしたいという思いを持って、町づくりをされているということ。
  • 象徴的だったのは、海外とのやり取りを仕切る責任者がバイリンガルのアメリカ人であったこと。日本の田舎は、閉鎖的な環境のところが多いなかで、これにはさすがに驚いた。
  • また、副市長もこのバイリンガルの方も、震災後に外部からやってきたのだが、「私たち」という際には最新の注意が必要であると言っていたのも学びとして大きかった。
  • 責任の主体として、第一人称で語る必要がある一方で、外部から来た人は、大切な人を亡くしたりしたわけではなく、完全にその気持ちを理解することはできないので、軽々しく、「私達」とも言えない。
  • この距離感の取り方は、どこかのコミュニティに外部から飛び込む際には、重要な視点だと思う。

 

⑥民間企業から(民間企業なので、詳細については省いています)

  • 気仙沼ニッティング八木澤商店斉吉商店から、それぞれの震災後の被害状況や、そこからの復興の過程についての説明を受ける。
  • 大きな学びとしては、震災後に、被災前の規模での操業や被災前と同じ内容での操業に拘らずに、出来ることから行うこと・かつ付加価値の高いことを行うようにすることで、利益を出している点。
  • 政策的にどうすれば、それを支援できるかは難しいが、視点として常にもっておきたい。 
  • また、全員、社長やそれに準ずる人で、人生や組織の判断にオーナーシップを持っている人であったことも、ここでの人を魅力的に感じる要因であったように思う。自分達の決断やその理由が非常にクリアに語られていた。
  • 通訳による分かりにくさはあっただろうが、ある程度はその迫力が伝わったと思う。

 

⑦メディア

  • 東海新報という陸前高田を中心とする地域の地域紙を発行している企業の編集長にお越し頂いた。
  • 震災以後に発行した紙面を紹介する形で、地震発生以降、被害が拡大していく様子から、災害対応、復興へと続いていくプロセスを非常に分かり易くまとめられていた。しかも、紙面自体、定点観測しており、復興の様子が物理的に分かるようになっている。これは、地域メディアだからこそできる視点で、非常に付加価値の高いことをしていると思う。
  • 特に印象的だったのは、「地震発生直後に「テレビも何もない被災者はどんな情報を求めているかを考えた」そこで、「各避難場所での避難者の情報」や「紛失遺体(身元が特定できない遺体)の特徴」を掲載するようなことをした」という話。
  • 徹底した消費者視点を貫いている点が、地元で消費者を獲得できている点なのかな?という感想を持つ。

 

 ⑧番外編(寺子屋

  • 気仙沼ニッティングで、「小学生に勉強を教える」ということを始めるので、Trip本隊が東京観光に行くのを見送り、一人、気仙沼に残った。これが以外と学びが多かった。
  • まず、小学生が好奇心旺盛に色々と日常の疑問を質問してくる。これは東大理系現役の学生に言わせると「卒論のテーマになりえるくらいいい質問」だそうだ。「氷の解けるスピードから水の温度は測れるのか?」「水が湧いてでているはずなのに、なぜ海の水は増えないか?」等。今は大学院で学んでいるが、課題が多いとどうしても「解を解く」ことに意識が向いてしまうが、「問を見つける」ことも意識したい。
  • 後は、教える方法。この企画自体も、勉強内容を教えるというよりは、「学ぶ楽しさを教える」ということが目的。これは難しいが、「いい質問をして、考えることを促す」「小学生がいい質問をした場合は、一緒に考える」という姿勢が大切な気がする。本当に人は、本来、自分の好奇心を持ったことについて、自分で考えるのが好きなんだということを学んだ。
  • 職場に戻れば、新人等が部下に配属されることも予想されるが、ここでの経験や視点を大事にしたい。

 

 日本そしてNYで協力して下さった方々、共に企画したオーガナイザー、(言葉は通じないので別途伝えますが)参加してくれたクラスメイト、その他お世話になった全ての方に御礼申し上げます。