Columbia(MPA) to Cambridge(MBA)

コロンビア大学(SIPA)、ケンブリッジ大学(MBA)の留学体験記です

【読書感想】知識機動力経営(野中郁次郎)

アメリカ海兵隊の組織構造を分析した上で、日本企業への提言をしている「知識機動力経営」を読んだのでメモ。

 

「機動力のある組織を構築するにはどうすればよいか」という問題意識のもと、「機動力」のある組織としてアメリカ海兵隊の組織の特徴を分析し、その日本企業への提言をしている。

 

いわく、アメリカ海兵隊は、個人と組織で、それぞれ以下の特徴があるとのこと。

 

個人

  • OODAという情勢判断・意思決定の型の徹底を徹底している。
  • OODAとは、観察—情勢判断—意思決定—行動ーのサイクルを回すこと
  • 結果として、闘いながらも「考える」余裕ができる

 

組織

  • 指令と制御:上司は大局の判断を行い、部下は現場に基づいた判断を行う。
  • 組織的なOODAを回している:
    • OODAを個人だけでなく、様々な階層のレベルで実践している。(ここは解説があるがいまいちイメージが掴めず)
    • 個人が型を徹底し、それが共有されることで信頼が生まれる。
    • また前線で闘った人間が後方に回ることで、実戦を積んだ人間が暗黙値を形式値に変換することができる(ので、組織的な知見となる)

 

これって、実は政府内でいわゆる一種職員の配置で行われていることな気がした。

 

基本的に、入省後、政府職員は、総括という課内、局内、省外からの情報を集まる場所に配置されるので、1−2年目の職員は大雑把に以下のことをひたすら繰り返す。

 

①回りで起きていることを観察する(観察)

②必要な情報を判断し、必要な形で上司に報告する(情勢判断?)

③上司の指示(意思決定)、

④何かしらの行動、というサイクルを回すことにある。

 

係長になっても、課長補佐になっても、課長になっても基本形は変らない(のではないかと下っ端からは見える)

 

これって、上記のOODAという野中先生が指摘されている型そのものではないかという気がしている。しかし、政府はけして「機動力」がある組織だとは思われてないないし、実際多分そうではない。これはなぜだろう。

 

個人的な仮説は以下の二つ。

 

①特に観察ー情勢判断ー意思決定ー行動というサイクルはあるが、「観察の仕方」、「情勢判断の仕方」、「意思決定」等が先輩から後輩に暗黙知的に伝えられる部分が多く、「型」となっておらず、そのスピードが遅いことがあるように思う。

 

②二つ目は、上記で書いた「指令と制御:上司は大局の判断を行い、部下は現場に基づいた判断を行う。」に問題があるように思う。

 

また、人事異動も、基本的に企業との接点がある現場に近い部署から、接点が少ないマネジメントのような部署まで幅広く経験するという人事サイクルもまわしている。ただ、暗黙値を形式知として蓄えるという部分は弱いのかもしれない。

 

ということで、以下がこの本から得られる示唆だろうか。

 

  • 「個人のOODA」の型を形式知化して、共有し、それを1年目から研修と実践で徹底的に実践すること

※)海兵隊では、この型の習得も含めて半年間の訓練を行うそう。