Columbia(MPA) to Cambridge(MBA)

コロンビア大学(SIPA)、ケンブリッジ大学(MBA)の留学体験記です

ケニア訪問記(1)

大学のプロジェクトで、ケニアに行ってきた。

 

プロジェクト抜きに考えると、面白かったのはサファリパークとマサイマーケット。

 

今回はマサイマーケットのお話。

 

マサイマーケットは、週一回(火曜日)に、ナイロビ近郊の田舎町に住む人が、ナイロビの中心部に様々な雑貨を売る商店を出店する。(店の数は凡そ3000-4000)

 

なお、マーケットに入る際に、エージェントのような人が自分に張り付いて、色々な店を案内してくれる。

 

欲しいものがあれば、このエージェントに伝え、価格交渉もこのエージェントと行う。(取引が成立し、お金を払うと、一部がこのエージェントに流れ、一部がマーケット全体に運営に、一部が店のオーナーに流れる )

 

特に、面白かったのは、価格設定と、それを巡る交渉。

 

「これいくら?」と店頭で聞いても絶対に答えてくれない。

 

欲しいものを選んで、オフィス(と彼らが呼ぶ場所。実際は、ただの広場の店が出店してない空き地に座る)に移動して、価格の交渉をしないと価格が決まらない。

 

交渉する前の雑談で、向こうはこちらの情報を色々と聞いてくる。

 

エージェント:「どこから(国)から来たの?」

私:「日本です」

エ:「おー今日は!自分は日本に友達がいる。だから、自分達も友達だね!友達プライスを約束するよ。」

私(心の声):どの国の人でも同じこと言うんだろな。」

エ:「仕事は何?」

私:「ケンブリッジで学生しています」

エ:「WOW!ケンブリッジの人は、いつもいいものを選んでくよ。」

私:「ケンブリッジの人とそんなに会ったことあるわけない気が。」

 

価格交渉は、

 

売り手が最初に、価格を提示する。

 

次に、買い手が、その商品に対して、払ってもいいと思う価格を提示。

 

徐々にその差を詰めていき、合意できれば、交渉成立。合意できなければ、取引は流れる。

 

交渉の始めのワンシーン。

 

エ:「◯◯シェリングでどう? 」

私(心の声):(え、たけーよ)

私:「そんなに払えないから、辞めておくよ」

エ:「払えない?現金がないなら、ATMが歩いて5分のところにあるから、案内するよ」

私(心の声):(5分ということは15分くらいかな。でも、どのみち払いたくない。)

私:「いや、時間もないし、いいよ。」

 

交渉終盤のワンシーン。

 

エ:「これ以上、価格は下げられない。」

エ:「ところで、そのボールペン。ケンブリッジのロゴが入ってるじゃん!友達の印に、そのペンくれたら、こっそり、もっと価格下げるよ」

私:「いいよ。上げる」

エ:「ところで、いい服着てるよね。そのワイシャツくれたら、もっと下げられるよ」(注:この後、現地のプロフェッショナルサービス系の人に、インタビューのアポイントがあったため、スーツを着てた)

私:「!???さすがに、服がないと困るので、それは嫌だ」

 

こういう感じで、取引修了。

 

 

交渉過程も面白いが、価格設定はもっとくせ者。

 

買い物後、他の友人と議論した情報をもとに推測すると、明らかに先進国出身者と、途上国出身者で最初の提示価格が異なるし、そもそも期待している出費額が異なる。

 

例えば、消費者一人当たりの出費額を聞いたのだが、自分は10,000,シェリング-30,000シェリングと返事を受けた。

 

欧州から来ていた友人は、8,000シェリング前後。アフリカ出身の人は3,000-5,000シェリングとの返事をもらっていた。

 

もちろん、商品に寄り出費額が異なる可能性もあるが、それだけではなく、出身国によって、大体、どの程度までなら払えるかを把握しているのだと思う。

 

ちなみに自分が買おうとしたものを最初に提示された価格は30,000シェリング

 

自分が提示した最初の価格は、3000シェリング

 

その後、自分が買うものをかなり減らして、7000シェリングぐらいで、合意。

 

なお、最後に店のオーナーに、原価的な価格をこっそり聞いたら、こっそり、エージェント抜きで、こっそり売買するなら、2000-3000シェリングで売れるとのこと。

  

この消費者毎に、異なる価格設定をすることは、ある意味で非常に効率的な面もある。

 

本来、各商品に感じている価値(や支払ってもいいと感じてる価格)は、消費者毎に異なるはず。なので、各消費者が払いたいと思う価格を支払うのが、(無駄がないという意味で)最も効率的なはず。

 

一方、

  • 消費者は自分が商品に支払っても良いと感じている価格を、正確に把握できていない場合も多い(ので、買い手からの価格提示がやりにくい)
  • 正確に把握できていても、商品毎に交渉していては、交渉に時間を撮られてしまう。

 

というネガティブな面もある。

 

さらに、

  • 消費者毎に異なる価格設定をすることは、「不公平」という感覚を消費者に与えてしまう可能性もある。

 

実際、MBAのマーケティングの授業で、昔、アマゾンが消費者毎に、異なる価格設定を行うアルゴリズムを設定していたことが話題に成った時、「それは不公平だという感覚を与えかねないので、反対だ」という意見が多かった記憶がある。

 

「この不公平感を感じる」ことを、マサイマーケットのエージェントや店のオーナーも知っているのか、「合意した価格は他言無用」とかなり念を押された。

 

定価がいいのか、交渉による異なる価格設定がいいのかは、状況によって異なると思うが、基本的に、「繰り返し行われる売買取引」は定価があった方がいいように思う。

 

このマサイマーケットも、基本は同じような商品を、毎週売っているので、定価があってもいいような気がするが、なぜ、個々の価格交渉する余地があるのかを、考えてみたのだが、以下の二つが大きな理由であるように思う。

 

①同じお客さんのリピートを想定してない

  • 同じお客さんのリピートを想定しないので、店主にしてみれば、後で、異なる価格設定をしていたことがばれて、不公平だと思われても構わない。
  • お客さんも、何回もくるわけではないので、相場を知りにくい。

 

②色々な所得階層の人がくる

  • 先進国から、途上国まで、本当に色々な国の人が訪問する。
  • 当然、国によって給与水準が異なるので、給与水準と照らした相対的な給与水準が同じでも、絶対額としての金額は異なってくる。

  

途上国の観光地で、ブランドがないところだと、①②を満たしやすいので、どこでもぼったくり(だと、こちらが感じる)状況になったり、交渉が発生したりするのだと感じた。

  

ビジネススクールの価格設定とか交渉の授業より、時間あたりの学びが大きかったです。

 

 

写真は、週末に行ったサファリパーク。まさに沈まぬ太陽の世界。

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