組織改革とリーダーシップ
今学期の授業の一貫で、「Leadership in Action」という、実業界で活躍している人の話を聞く授業がある。
そこで、公的組織で組織改革にあたった方のゲスト講演があった。
(チャタムハウスルールの下にあるので、組織名・講演者は明かすことができない)
この方の組織改革に関する話は、MBAの授業の、「Organizational Behavior」や「Value Driven Leadership」のケーススタディのような内容で、学びが大きかったので、学びをメモ。
①公的組織でも大きな組織改革をし、効果を上げることができる。
書くと平凡だが、公的組織出身の身としては、ほんとにこれは、驚きだった。
自分のいた組織を悪くいうつもりはないが、官僚組織は、
- 基本的に、歴史が長いため「いつのまにか前提になっていること」が多くあり、
- マーケットに晒されていないので、改革圧力も民間の企業に比べると弱い
ため、時代に合わせた変化がしにくい環境にあるように思う。
その公的組織の一つに変化をもたらすことができた人の話を目の前で聞けたのは、「やれば出来る」という、例を間近に見た気がして、非常に勇気づけられた。
このゲスト講演の授業の価値の一つは、何かを成しとけた人身近にみることで、そういったことを「別の世界のこと」とは見ず、ある程度オーナーシップを持って、みれるようになることにあるように思う。
②Be Authentic
Value Driven Leadershipでの教えの一つ(というかMBAでのはやり?らしく、この本が有名とのこと:「Finding Your True North」))に、「自分のパッションや価値観を認識し、そこに正直であれ」「その価値観で人との関係を構築していけ」というものがある。
この方、最初の公的組織に入った時は、閉鎖的な縦割り組織で、とてもやっていけないと思ったそうだ。
最初は我慢していたが、その不満を仲間や上司に話すうちに、どんな組織がいいかを議論するようになり、熱心になっていたところ、階級の高い人の中でも賛同者がいて、組織改革にあたることを任されたとのこと。
本人も、リーダーシップみたいなことを、ここでかなり認識するようになったと言っている。
②組織文化はアクティブに作っていくもの
これもValue Driven Leadershipの教えで、「組織文化は、そこにあるものではなく、pro-activeに作っていくものだ」というものがある。
この公的組織である緊急事態が発生した時、この方はある部門の責任者であったが、外出中であったらしい。
緊急事態を知り、急いで部署に戻ったところ、職員が、一斉に自分に注目し、一挙手一投足に注目が集まるのを感じたとのこと。
その注目で、逆に冷静になり、
- 努めて冷静であること
- 緊急事態だからといって、24時間働き続ける等、無理な体制は取らないような体制を取ること
等の行動を取っていき、結果として、緊急事態であっても、冷静に対処していけたと振り返っていた。
③組織文化とは何か?
「組織文化を形成するものは何か?」ということを考えると、どうしても、
「ある集団の行動様式」や
「無意識のうちに前提となっている」
のように、目に見えないものに意識が集中してしまいがちだ。
ただ、Organizational Behaviorでの教えの一つに
組織文化を形成するのは、目に見えないものだけでなく、「
組織形態・服装・ロゴ・部屋のレイアウト等の形あるものも含める」
というものがある。
ケースや講義からの学びでは、形あるものを変えても、「無意識で前提となっている常識・慣習」を変えることができないと、組織文化は変らない、ということに主眼が置かれていた。
ただ、この方の組織改革の場合は、建物の老朽化していた時期でもあったため、建物を新築する時期に重なっていたらしい。
そのため、理想的なレイアウト等を議論し直して、「吹き抜けの空間」「職員同士が、リラックスして、コーヒー片手に立ち話ができる空間」など、フラットでオープンな場所になるような、仕組みにしたとのこと。
そして、金曜には、みんなで、その共有空間にみんなで、食事やビールを持ち寄って、歓談したりする慣習を作っていく。
結果として、徐々に職員の意識もかわり、フラットな組織へとなっていき、他の組織から視察がくるようになったとのこと。
これは、「無意識の慣習・前提」という目にみえず、意識することも難しいものを変えることが重要でも、レイアウトや日常的な慣習等、目に見えるものから変えていくことで、徐々に変えていける、ことを示唆しているように思う。
④組織は戦略に従う
これは、元はアルフレッド・チャンドラーの書籍名だが、「Strategic Human Resource Management」の授業等でも形を変えて、似たような学びがあった。
冷戦時代は、ソ連等への対応をすることが重要であっため、ソ連という国家に対応するようなヒエラルキー型の組織であることも、一定の意味があったとのこと。
ただ、徐々に対応すべき課題が、そういう国家という秩序のあるものから、ネット上の問題へとシフトしていくに従い、よりフラットで、横の繋がりが強い組織へと変えていく必要が生じた。
この問題意識を出発点に、組織改革に着手したとのこと。
最後のQ&Aで、「組織改革に伴う抵抗にどう対処すればいいか?」という質問をしてみたが、その回答の要旨は以下の通り。
- 「抵抗は、当然あるものだ」という認識を持つ事
- 抵抗する人の中には(ただ変化が嫌で抵抗する人もいるが)、何か自分なりの組織への思いがあり、抵抗する人もいる。こういう人は、話せば納得して、「Change Maker」になりうるので、こういう人を見つけること
- この「Change Maker」を何人か見つけ、改革で重要なポジションについてもらうこと
の三つが大事ではないかとのこと。
プログラムも愈々終盤、学んだことを有機的に結びつけ、少しでも意味なるものにして、卒業を迎えたい。
※)Organizational Behavior やコロンビア大学時代で、この分野を専門にしている友人の勧めで、授業の課題をやる際に「Organizational Culture and Leadership」を少し流し読みしたが、非常に示唆的な本だった。