日本は普通の先進国
という政治学者がコロンビア大学にいる。
1964年にコロンビア大学で国際関係の修士課程を終了して以来(最終学歴はPh.D)、一貫してコロンビア大学で日本政治を教えてきた先生だ。
50年以上、コロンビア大学で教鞭を取り研究されてきたカーティス先生が、
今学期で退官されるということで、ランチ時間に簡単に囲む会があった。
「今まで出会った印象的な日本の政治家は?」という質問に、
三木さん(66代内閣総理大臣)は・・・
細川さん(79代内閣総理大臣)の家に招かれた時は・・・
と、過去の総理の名前が次々と出てくることからも分かる通り、過去に日本に滞在した際に、日本の総理を始めとする多数の政治家と知り合い、地に足のついた日本政治研究をされてきている。
日の当たるところ、当たらないところで、日米関係の構築に貢献してきたであろうことを考えると、引退が惜しまれる。
このセッションで、自分は
「日本の経済力が相対的に小さくなり、日本へのアカデミックな関心が薄まる可能性が強い中で、カーティス教授のような人を育てるにはどうすればいいと思うか?」
という質問をした。
これに対するカーティス教授の回答に、思わず「はっ」とさせられてしまった。
「昔は、自分のクラス(日本政治)に興味あるのは殆どがPh.Dを目指す修士課程生だった。今では、日本政治のPh.Dを目指すアメリカ人は殆どいない。」
「その代わり、学部生等、もっと若い人が一般的な興味として、自分のクラスを取るようになってきている。これは、日本が「普通の先進国の一つになった」ということだと思う。」
「今は、中国や東南アジアを専攻したがる人の方が多いのではないか?」
この回答を自分なりに噛み砕くと、
- 日本が急速に成長していた60−80年代は、マーケットの可能性や、政治経済システムの成功の秘訣をしろうとして、多くの人が日本に興味を持ち、研究対象とした。
- 今は急成長しているのが中国等に移っているので、そちらに人気の研究対象が移っただけ。
- 急速に成長するフェーズが終わった日本は、普通の先進国となった。
- なので、日本政治・経済を専門に研究する人が減っているのは、消してネガティブなことではなく、どの国でもありえる普通のこと。
ということではないかと思う。
確かに冷静に考えてみれば、日本でも「イギリス研究」「フランス研究」等を専門とする人が一定数ながらいるわけで、アメリカでも、同じように「日本研究」が先進国の一つとして、研究対象となったということなのだろう。
「はっ」
となったのは、いつのまにか、
「日本にだけ特別な、日本研究者を増やせる魅力・理由がある」
という、無意識の前提を置いてしまってたからなように思う。
人間、バイアスを捨てては生きられないけど、どういうバイアスを自分が持っているのかに対して、もっと意識を向けられる人間でいたい。
・・・
ちなみに、カーティス先生は、学部やもっと若い世代が日本に訪れる機会を作ることが大事ではないかと指摘されていた。
「日本を訪問した多くの学生は日本ファンになってくる。若い世代が、そのような経験をすることは、その人の人生にも、その人が生きる地域・国にとっても、大きな影響があるはずだ」
Japan Tripの多くは、修士の学生を対象として、修士で留学している日本人によって行われているが、もっと若い世代を対象としたツアーがあってもいいのかもしれない。