Columbia(MPA) to Cambridge(MBA)

コロンビア大学(SIPA)、ケンブリッジ大学(MBA)の留学体験記です

留学におけるグループワークの分析

「意見は中々言えないけど、ちゃんと作業したり、エクセル計算するのは日本人は比較的得意だよ」

これは、留学の準備期間に、

「英語で意見を言うのが苦手な日本人はどうグループワークで貢献できるんですか?」

という質問を先に留学されていた方にした時に、何回か聞いた答えだ。


自分は、この答えに何となく違和感をもっていたのだが、最近何となく、答えが分かったように思う。


グループワークは、資料づくり・分析の役割分担と、ディスカッションする時の立ち位置の二つに分けて、考えることができるように思う。


資料・分析づくりの役割分担

  • 編集者:資料の全体構成を作る。また、最後にチームが作ったパーツを編集して、一貫性を保持する係(通常1人)。
  • パーツ作業者:編集者の作った流れの中で各パーツを作る係(通常殆どの人がこの役割)。
  • フリーライダー:殆ど何もしない人(5人のチームだと大体1人は出てくる)。


ディスカッションする時の立ち位置

  • 意見をリード:何となくみんなの意見を組みながら、意見をまとめていける人(1人)。
  • 意見を加える:全体の議論を見ながら、有益な情報を加える人(通常、複数)。
  • 流れを読まない:全体の議論の方向関係なく、意見を言う人(大体、5人のチームだと1人はいる)。
  • 沈黙する:文字通り、意見を殆ど言わない人(いる場合といない場合がいる。)。

整理すると以下のようになる。

編集者 パーツ作業者 フリーライダー
意見をリードする
意見を加える
流れを読まない
沈黙を守る


5人でグループワークするとすれば、うまく行き易いチーム構成は①が1人、⑧が1人、⑤が3人とかだろうか?

⑤の3人が意見を出し合いながら何となく全体の意見を構成していく。たまに⑧の人が全然違った角度から意見を投げる。そして、①が議論全体をリードし、資料の骨格も示す。その骨格に基づき、⑤と⑧の人で作業を行い、再度①がまとめる。


当然同じ5人でチームを組んでも、テーマによって役割が変りうるが、こういった組み合わせだと(経験的に)うまくいっている気がする。流れを読まないで意見を言う人は、たまに全然違う角度から意見を言うので、みんなを「あっ」とさせる。この人もちゃんと資料作ったりするフェーズでも貢献する意思を示せば、みんな最後まで⑧の人の意見にも耳を傾ける。


たまにありがちなのが、①が1人、⑨が1人、3人が⑤のパターン。この場合、流れを読まない人が鋭い意見を言っても、「こいつ、どうせ資料は作らないフリーライダーなのに勝手な意見ばかり言いやがって」と反感を買い易く、⑨は徐々に無視されていく。結局、①と⑤でプロジェクトをやっていくようになる。


特殊なパターンの経験としては、かなりいびつな感じで、③➡⑨が1人、④が1人、⑤が3人という感じ。この場合、③の人は意見をまとめようとするのだけど、自分で分析・作業をしないので、中味をあまり理解できておらず、プロジェクトの途中で徐々に⑨っぽいポジションに。逆に③➡⑨の人が作った流れを④の人が資料に落とそうするのだけど、どうしても「編集者=意見をリードする」場合と比較すると、資料の構成が議論の結果とずれてくる。なので、⑤の人も資料のアウトプットがぶれて、全体も何となくまとまりのないアウトプットとなる。


最初の疑問に戻ると、日本人に多いのは⑤ではないだろうか?

そして、⑤を何とかやろうとして意見を言えずに⑪になってしまう場合もあるのではないだろうか?(冒頭の発言も⑪のことを言っているのだと思う。)

⑪は確かに⑫よりは価値があるが、⑫を除くこの分類上のどの他のどの位置よりも、価値がない可能性が高い。

もし、企業同士の話/政府同士の話合いで⑪の立場なのであれば、それは、「他の人が決めたルールに従って、合意文書を作る」ことを意味するのではないだろうか?

果たして留学している人が目指すのはそんな姿だろうか?どちらかと言えば、国籍が異なる人が集まる場でも、ちゃんと議論をリードできる人なのではないだろうか?

そうだとすると、グループワークでは当然、①か②の立場を取れるようにすべきではないだろうか?


自分が留学生活の中で、殆どが⑤だった。そして、①か②の立場を取れたのは、残念ながら

  • 自分が強いテーマ(日本のケースを扱う、マクロ経済系の課題等)
  • 他の人の課題・プロジェクトへのコミットが低く、⑤⑥⑪⑫の人が多かった

という場合。

自分の留学中の挑戦の一つは馴染みのないテーマでも①か②のロールを取れるようにすることだったが、これは残念ながら達成できなかった。ただ、チームにその時の課題に詳しい人がいれば、その人が①のロールを取るのが、一番効率がいい場合が多いので、
必ずしも①か②の立場に拘るのがいい訳でもないようには思う。


いずれにせよ、これは課題として残したまま、現実世界に戻る。


もう一つの挑戦は⑦&⑧。

MBA時代に何回か、⑧のロールを取りに言ったことがあるが、これは中々苦しい。ケンブリッジは比較的、「コラボレーション」を重視しているので、どうしても、あまりに流れを読まない人は嫌われる傾向にある。ただ、上記の分析のように、

  • ⑨ではなく⑧であること。(最後は責任もってアウトプット作りに参加する)
  • 基本は⑤のスタンスを取り、ここだと思う時に⑧のスタンスを取る

ということに気を配れば、「流れとは違う意見」が、「流れを変える意見」になりうるのではないかと思う。


最後に⑪について。

自分がSIPAで最初の学期に加わったプロボノコンサルのプロジェクトは、正直⑪のポジションだった。

➡回りが何を言っているのかが良くわからない
➡発言できない
➡議論に余計ついていけない
➡たまに「今のはこういうこと?」と質問する
➡チームメンバーから「こいつは質問ばかりして、全然意見を言わないと思われる」

という感じの悪循環にはまっていた。

途中で気づいたのだが、実は以下のような負のループがあるように思う。

➡相手の言っていることが分からないから、単純に質問する
➡その答えも結局良くわからない
➡再度質問するのも悪いので、黙る
➡議論が次に進む
➡余計に分からない・・・

こういう場合は、議論の流れで理解できている範囲のことに対して、ちゃんと自分の意見を言うことが大事なように思う。すると、それに対して、他の人が反応するので、まだ議論が理解できる範囲を保てる。


まとまりのない文章だが、グループワークも色々と考えてみると奥が深い。


※この分析は全て自分の経験談なので、多いに歪んでいる可能性があります。