Columbia(MPA) to Cambridge(MBA)

コロンビア大学(SIPA)、ケンブリッジ大学(MBA)の留学体験記です

Double Degree〜MBA+別分野の修士を「3年未満」で

  • MBAは勉強する範囲がジェネラルなので、他の分野を掘り下げたい。
  • 多くのダブルディブリーは3年かかる。
  • 3年分も学費・生活費がない。時間ももったいない。

 

と思っている人は以外と多いのではないだろうか。こういう人にとって3年未満でのオプションがあれば、助かるのではないだろうか?

 

そこで、なかなかまとまった情報がないので、少し整理してみた。

 

2年で取れるオプション

①Oxford MBA 1 + 1 program

  • Oxford MBAと指定のMasterをそれぞれ1年ずつ行うコース。
  • 他のdouble degreeと比較して、選択できるMasterの分野が圧倒的に広いのが特徴な気がする。(Education, African Study, Environmental 等)
  • Oxfordは最近、1年制の公共政策プログラム(MPP)も提供しているが、MBA+MPPは認められていないのか、公式のHPには記載されていない。
  • ケンブリッジMBAも同じ仕組みができそうだが、現状は行っていない。間違えてもOxfordと同じ制度は採用したくないということだろうか。

(Oxford MBA 1+1)

http://www.ox.ac.uk/admissions/graduate/courses/social-sciences/management-studies/oxford-1plus1-mba

(Oxford MPP)

http://www.ox.ac.uk/admissions/graduate/courses/master-public-policy

 

②1年制MBA+1年制のMaster

  • そもそもイギリスは1年のマスターが多いので、1年制のMBAと1年制のMasterを組み合わせることも可能だと思う。LSEの経済学修士ケンブリッジMBA等。

 

また、MBA+MA(Education)なら2年で取れる組み合わせが多い。

 

③Columbia MBA + Columbia TC

http://www.klingenstein.org/MAMBA

 

④Columbia TC+ INSEAD (INSEAD側のリンク)

http://mba.insead.edu/the-insead-mba/partnerships.cfm

 

⑤Stanford MBA +MA (education)

(リンク)

https://www.gsb.stanford.edu/programs/mba/academic-experience/joint-dual-degrees

 

2年半で取れるオプション

①Columbia SIPA + 1年制MBA

  • これは正式なDouble Degreeではない。ただし、以下の制度を利用する。
  • SIPAは、12単位まで関連する他の大学院( MBA、IR、MPA等)の単位をトランスファーすることができ、3学期間在籍すれば卒業できる。
  • なので、SIPAで1年半+他の大学のMBAでの1年を組み合わせれば2年半で卒業が可能となる。
  • ただし、(1)1年MBA+SIPAで1年半、(2)SIPA1年+MBA1年+SIPA半年間のどちらか。SIPA1年半+MBA1年は制度上ありえない。

(1年制のMBA ranking 。Top3はINSEAD、IMD、Cambridge)

※ただし、IMDは開始と終了時期がやや特殊なので、スケジュールがはまるか要確認。

http://www.forbes.com/pictures/mlh45ellf/3-cambridge-judge/

 

②SIAS+INSEAD

  • SAISの国際関係のマスターとINSEADMBAのデュアルディグリーが正式に認められている。

(SAISのHP)

http://www.sais-jhu.edu/content/academics#dual-degree-and-cooperative-programs

 

※ 当然ここにあるのが全てではないので、情報を頂ければ、随時アップデートしていきたと思います。

※また、ここにある情報の殆どは自分が知人から聞いた&ネットで調べた情報なので、アプライする場合は、各学校に確認し、最新の状況を確認して下さい。

日本は普通の先進国

Mr. ジェラルド・カーティス

 

という政治学者がコロンビア大学にいる。

 

1964年にコロンビア大学で国際関係の修士課程を終了して以来(最終学歴はPh.D)、一貫してコロンビア大学で日本政治を教えてきた先生だ。 

 

50年以上、コロンビア大学で教鞭を取り研究されてきたカーティス先生が、

今学期で退官されるということで、ランチ時間に簡単に囲む会があった。

 

「今まで出会った印象的な日本の政治家は?」という質問に、

 

三木さん(66代内閣総理大臣)は・・・

 

細川さん(79代内閣総理大臣)の家に招かれた時は・・・

 

と、過去の総理の名前が次々と出てくることからも分かる通り、過去に日本に滞在した際に、日本の総理を始めとする多数の政治家と知り合い、地に足のついた日本政治研究をされてきている。

 

日の当たるところ、当たらないところで、日米関係の構築に貢献してきたであろうことを考えると、引退が惜しまれる。

 

このセッションで、自分は

 

「日本の経済力が相対的に小さくなり、日本へのアカデミックな関心が薄まる可能性が強い中で、カーティス教授のような人を育てるにはどうすればいいと思うか?」

 

という質問をした。

 

これに対するカーティス教授の回答に、思わず「はっ」とさせられてしまった。

 

「昔は、自分のクラス(日本政治)に興味あるのは殆どがPh.Dを目指す修士課程生だった。今では、日本政治のPh.Dを目指すアメリカ人は殆どいない。」

 

「その代わり、学部生等、もっと若い人が一般的な興味として、自分のクラスを取るようになってきている。これは、日本が「普通の先進国の一つになった」ということだと思う。」

 

「今は、中国や東南アジアを専攻したがる人の方が多いのではないか?」

 

この回答を自分なりに噛み砕くと、

  • 日本が急速に成長していた60−80年代は、マーケットの可能性や、政治経済システムの成功の秘訣をしろうとして、多くの人が日本に興味を持ち、研究対象とした。
  • 今は急成長しているのが中国等に移っているので、そちらに人気の研究対象が移っただけ。
  • 急速に成長するフェーズが終わった日本は、普通の先進国となった。
  • なので、日本政治・経済を専門に研究する人が減っているのは、消してネガティブなことではなく、どの国でもありえる普通のこと。

ということではないかと思う。

 

確かに冷静に考えてみれば、日本でも「イギリス研究」「フランス研究」等を専門とする人が一定数ながらいるわけで、アメリカでも、同じように「日本研究」が先進国の一つとして、研究対象となったということなのだろう。

 

「はっ」

 

となったのは、いつのまにか、

 

「日本にだけ特別な、日本研究者を増やせる魅力・理由がある」

 

という、無意識の前提を置いてしまってたからなように思う。

 

人間、バイアスを捨てては生きられないけど、どういうバイアスを自分が持っているのかに対して、もっと意識を向けられる人間でいたい。

 

・・・

ちなみに、カーティス先生は、学部やもっと若い世代が日本に訪れる機会を作ることが大事ではないかと指摘されていた。

 

「日本を訪問した多くの学生は日本ファンになってくる。若い世代が、そのような経験をすることは、その人の人生にも、その人が生きる地域・国にとっても、大きな影響があるはずだ」

 

Japan Tripの多くは、修士の学生を対象として、修士で留学している日本人によって行われているが、もっと若い世代を対象としたツアーがあってもいいのかもしれない。

【SIPA授業紹介】卒業プロジェクト

コロンビア大学SIPAでは、政府・NPO・民間企業を相手に、SIPAの学生数人でグループを組み、卒業プロジェクトをする必要がある。

 

クライアント一覧

https://sipa.columbia.edu/academics/capstone-workshops/mia_mpa?sort_by=field_client_name_value

 

自分はあるNYベースの企業をクライアントにしたプロジェクト。

 

石油業界では、石油精製所の稼働率が、マーケットを読む上で重要になる(らしく)、この会社は、この稼働率を予測できる指標の作成を行っており、その手伝いが、このプロジェクト。

 

プロジェクトの中味自体はそこまで、興味なかったのだが(今学期卒業するには、選択できるプロジェクトが事実上これだけだった。)、プロジェクトの経過が面白い。

 

※)なぜか、NDAにサインするように言われてないのだが、企業名と細かいプロジェクト内容を言うとまずい気がするので、ふせておく。

 

①クライアントには何を報告すべきか?

クライアントから、クライアントがある程度作成を進めていたデータを渡され、そこから作業を進めいたのだが、途中でそのデータが正確では可能性があることに気づいた。そのときのメンバーの反応。

 

メンバーA

「このまま作業を進めても仕方ないから、自分達の作業結果と、クライアントのデータに間違いがある可能性を報告しよう。」

 

メンバーB

「いや全部いきなり報告すると、クライアントから、新しい発注を受けたら面倒なので、一部だけ報告して、「間違えている可能性もあるので、続きの作業をすべきか」を相談しよう。」

 

メンバーC

「いや、クライアントは、このデータが間違えているとは思ってないし、そんな結果望んでないと思うので、ポジティブに解釈できる可能性を探ろう。」

 

  • 自分の力(成果)を全部見せるより、ちょっとずつ見せよう。(その方が力を温存できて楽だから。)
  • 何となくトラブルになりそうなことは、避けておきたい。 

という、ことは日本特有ではないのかもしれない。(結果はAを採用。)

 

 

②丹念に拾ったデータの価値

上記の結果をクライアントに報告した際。最初のサマリーの報告では、

 

「おーありがとう。確かに何か変かもね。丹念に調べてくれてありがとう 」

 

と軽い感じだった。

 

ただ、こちらが細かく拾った(チームメイトが英語だけでなく、イスラム語や韓国語の情報まで含めて、源流に近いデータを拾ってくれた)データを見せていくと、さすがにクライアントも本気になってきて、

 

「今度、担当者とミーティングをセットするので、どこに間違いがあるのか、探して欲しい」

 

という依頼がきた。

 

その後、担当者と打ち合わせをしたのだが、

 

担当者が明らかに、神経質になっているのが分かる雰囲気で登場。

 

その姿に、SIPAのチーム一同、最初はものすごい様子をみながら会話を進める。

  • お前のデータは間違えてるのでは?
  • どこが間違えてるのかを聞きにきた!

などとは聞かず、

  • 自分達でもデータを簡単に作成してみたので、確認してもらえないか?
  • 素人で、おかしな点があるかもしれないので、教えて欲しい

というスタンスを取る。

 

すると、徐々に、担当者も落ち着き、

 

担当者の持つデータセットと、こちらのデータセットを丹念に照合していき、何となく、クライアント側のデータに誤りがある可能性が明らかになった。

 

(結果、プロジェクトの課題として、

 

「クライアントがデータを作る過程のどこに問題があるのか?」

 

という、当初とは全く違う内容のことを、依頼されて今に至る。

 

短期的には都合悪く摩擦が起きそうだが、長期的にはお互いのためになることの場合、

  • コミュニケーションは柔らかく(無駄な所で相手を刺激しないため)
  • でも、ファクトとロジックは詰めて、相手が徐々に納得できるように出していく。
  • 担当者だけでなく、責任者にも確実に巻き込む

というのは、米国でも同じなのかなーという学びになった。

 

最初はローキー気味だったが、「どこにでも学びはある」というのを改めて学ぶ、こととなった。

 

※)ちなみにこのプロジェクトは結構特殊なプロジェクトで、正式な時期のプロジェクトであれば、途上国に実際に行ったりするプロジェクトもある。また、もっと公共政策寄りのプロジェクトも多数あります。また、プロジェクトのスコープも、普通はもう少し広いものになるかと思います。

 

ケンブリッジMBAークラスメイトの近況(プログラム終了1ヶ月後)

Dear World

 

How do you measure the impact of the university?

 We can count the novel prizes,

 or the number of the students who led the countries,

 or, won Olympic medals,

 略

 But, the real impact of Cambridge is the effects of it have on people’s life.

 

出典:「Yours, Cambridge: The Campaign fo the University and Colleages of Cambridge」

 

ケンブリッジ大学としては、人にどのような影響を与えたかで、その存在価値を測りたいらしい。

 

では、MBAを経て、同級生はどんなところに着地し始めているのか、直近の同級生のキャッチアップをもとに整理してみた。

 

元々、エンジニアで、一緒に社会起業プロジェクトをやっていた友人は、プログラム開始直後はコンサルタントを目指してケースの練習をしていたのに、今はホンジュラスにいるらしい。社会起業のアイディアを試すとのこと。「We should be disruptive」といつも言っていたが、行動もdisruptiveだ。

 

プロジェクトで一緒にケニアに行ったエンジニアの友人は、ファイナンスのバックグラウンドが全くないのに、ロンドンでPEの仕事についていた。将来的にはImpact Investment Fundに興味あるとのこと。「何をしたいのか分からないから、MBAから紹介される案件には全部応募している」と最初は言っていたが、MBAの最後は、Impact Investmentのコンサルプロジェクトを熱心にやっていた。

 

スタディグループで仲のよかった友人の1人は、イギリスにいた時に、起業アイディアと既に作り始めているホームページを見せてくれたのだが、面白そうなアイディアだった(教育プラットフォームのようなアイディア)。が、今は、一度母国に帰り、元の会社での仕事(ITコンサル)をしながら、そのアイディアでの起業準備をして行くとのことだった。

 

一緒に旅行に行って、仲のよかったグループの友人は、失礼な言い方かもだが「いかにも」なPost -MBAに行っている感じだった。Amazon, McK, Fung Group, BCGなど。このグループはみんな英語ネイティブなことに加え、就活の準備をかなり前倒してしてやっていたので、決まるのも相対的に早く、そのままその就職先に行っている。

 

特殊な例として、MBAの後に別のマスターに行くか迷ったりしていた友人がいたのだが(公共政策やファイナンス)、(別の学校のオファーを断り)就職する道を選んだようだった。留学前にメディカルコースにいた人もいるが、その人は(自分が公共政策に戻ったように)メディカルコースに戻った。

 

もちろん、(主にロンドンで)まだ、仕事を探している人もいる。今もロンドンに残っている人は、次の仕事を探す上での「場所」に対する優先順位が高いのだと感じる。「インダストリー」「ファンクション」「ロケーション」のどれを優先するかも人それぞれだ。 

 

日本人(私費の人)進路の特徴はスタートアップ(起業含む)の一言だと思う。(去年は、全員社費で、卒業後は元の組織に戻ったので、毎年の傾向ではないと思うが。)

 

結婚した人もいる。今年度中に式を挙げた人・挙げる予定の人が把握している範囲で4、5人いる。どの人もMBAに来る前から付き合っているパートナーと結婚している。

「留学前に付き合う→留学に来る→就職→結婚」の方が海外では一般的なのかもしれない。日本だと、「留学前に結婚→(奥さんを)連れて留学→共に帰国」が多い気がする。

 

 一方、同期ではないが、アラムナイの話(02年卒)。

 

ナイジェリアで大臣を務め、女性として始めてOPECのプレジデントを勤めたアラムナイが、逮捕されたらしいというニュースが同期の間で広まっていた。

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Diezani_Alison-Madueke

 

何か罪があったにしろ、(政治的な)濡れ衣にしろ、いずれにしろ残念なニュースだ。

 

どんな人生を歩むか分からないが、5年目・10年目の同窓会でここで出会った人達と再会した時、その時している事に胸を脹れる人間でありたい。

 

http://insight.jbs.cam.ac.uk/assets/2014_news_cambridgembaclassof201415beginprogramme.jpg

 

【コロンビアSIPA授業紹介】政治学者の起業家精神とPolitical Risk Analysis

「さて、今週は何が起きた?」

 

毎週、先生のこの一言から授業が始まる。 

等、Political Riskを巡る様々な話題を生徒が提起して議論が始まる。

 関係ない話題だったり、説明が不十分だったりすると、

 

「それはリスクだけど、どこがポリティカルリスクなのか?」

「経済にはどう影響があるのか?」

「なんで、この爆弾テロが大切だと思うのか?他のテロと何が違う?」

「So… what?」

 

と問い返される。

 

50%以上が留学生であることを反映してか、クラスメイトが提供する話題は多岐に渡り、「あれ、そんな事あった?」という思う話題もちらほら。

 

自分が知らない話題でも、議論についていけている人も多く、いかに自分が世界の情勢についていけてないかを、思い知る時間にもなっている。

 

この時間が30分くらい続いた後、その週の話題に移っていく。

 

内容は教科書である、イアン・ブレーマーの著書、The Fat Tail: The Power of Political Knowledge in an Uncertain Worldに概ね沿った内容をカバーしており、以下のような感じ。

  • Fat Tailとは何か?
  • ポリティカルリスクとは何か?
  • 地政学的リスクをどう分析するか?
  • 政治リスクのマクロ・経済・金融市場への影響
  • 政治リスクのある企業・産業への影響。

もちろん、毎回のリーディングは上記の教科書だけではなく、関連する論文が何個か指定される。

 

これを教えるのは、カリフォルニア大学バークレー校で政治学Ph.Dを取った後、ユーラシアグループでディレクターをしている人。

 

知見の広さ:

  • 生徒がどんな国の話題をふっても、基礎的な動向は確実に抑えている。

インサイト&ファシリテート力

  • 基本、授業の最初は、先生は質問しかしないのだが、質問—回答—先生の簡単なコメント&再度質問—生徒の回答、が繰り返されていくうちに、何となくその日の授業のまとめ的なものが板書に出来上がって行く。 

人柄:

  • ラテン出身のせいか、ひたすらポジティブ。

 

と3拍子揃っている先生で、授業も楽しい。

 

今日は、その先生が勤めるユーラシアグループのNY本社を訪問し、Founder and CEOのイアン・ブレーマーの話を聞く機会があった。

 

非常に印象的な訪問となったので、メモ。

 

ユーラシアグループ設立の経緯

  • スタンフォードで政治学Ph.Dを取得した後、政治学的なフレームワークは金融市場分析で活かせると思い、ゴールドマンサック等の金融機関で仕事を探していたが、相手にされなかった。
  • ある会社のインタビューで、「そんなに政治リスクの分析が、うちの会社の役に立つと言うのなら、何か分析して持って来てよ。面白かったら契約を結ぶよ。」と言われた。
  • この言葉をきっかけに就活を辞め、政治リスクが金融市場やその金融機関に与える影響を分析し、その金融機関に持っていった。
  • これが好評で、その金融機関は最初の顧客になってくれた。その後、自分を落とした会社に順番にその結果を持っていったところ、受け入れてもらえ、顧客層が広がっていった。
  • 今では、政治リスクコンサルティング会社として、世界中の数百の企業や政府を顧客に持ち、ニューヨークだけでなく、ロンドン等にもオフィスを構えられるようになった。
  • このように、自分は起業する意図は当初は全くなかった。ただ、誰も雇ってくれないので、自分で商品(分析レポート)を作り、売り歩いた結果して、起業になっていた。
  • 起業というと「リスクを取れ」とか、「VC」とかファンシーな言葉が飛び交うこともあるが、自分は外部資金を入れたことは基本的にない。

 

大切にしていること

  • 自分のモチベーションの根幹にあるのは、世界で起こっていることの真実の姿を伝えることで、正しい対応を喚起すること。
  • 顧客について:このミッションのため、基本的には、自分達の分析結果や提案が、その顧客企業や政府に対して不都合なものである場合、「拒否したり」「中身を変えるような圧力をかけたり」するような企業・政府は顧客にしないようにしている。
  • 組織体制:フラットな体制を敷いている。CEOは自分なので、組織の決定には自分が責任を持つが、分析の中身の議論をするときには、立場は関係ない。CEOの自分にも反論し易いような雰囲気になるように気をつけている。
  • 個人的なバイアス:自分はアメリカで生まれ育ち、英語を母国語とし、外国語はロシア語しか話せない。このことが、どのように自分の世界認識にバイアスを与えているのか、気をつけるようにしている。
  • 今は、この思いを広めるため、特に政治学者が、そのスキルを活かしつつ、シンクタンクやアカデミアではない活躍の場所を提供できるように、採用や研修にも力を入れている。
  • コロンビア大学(SIPA)やNYU(スターンMBA)で、授業を教えているのも、この活動の一貫だ。 その時間、レポートを書いていた方がお金にはなるのだが。

 

MBAで習うことのキーエッセンスの一つは、組織のミッション、戦略、組織体制等が一貫したものである必要があるということだと思っているが、ユーラシアグループは、それを体現している組織の一つであるように思う。

 

名政治リスクアナリストは、名経営者でもあるのかもしれない。

 

【SIPA授業紹介】Environmental Science

日本でいえば、地球環境科学のような授業。同名のPh.D & マスターコースのコアコースの一つであるが、自分の所属するプログラムにもオープンになっている。

 

内容は、温暖化、エネルギー、エコロジー、ハイドロジー、人間の健康、災害といった内容について、科学的な観点から理解できるようにすることが目的。週2時間の授業が2回ある。一回が授業、もう一回がディスカッション。

 

生徒は、SIPAから1人(自分)、MPH(公衆衛生学修士)から1人で、残りは基本、上記の環境科学のPhDかマスターの生徒。自分とNPH以外の生徒の環境問題への情熱と知識に圧倒的される。

 

授業は、基本的にレクチャーで、先生が説明し、適宜質問があれば、答える形式。専門用語が多いので、多分日本語で説明されても分からない部分があるが、講義ノートが充実しているので、それをスライドと照らし合わせて読めば、理解はできる。

 

ディスカッションは、生徒が事前に配られた論文を発表し、その内容について議論する。(8人しかいないのに、毎回3つ論文をやるので、2−3週に一回のペースで発表が来る。)

 

自分が担当した回の論文は、 

  • ①自然界に存在するエネルギーはどの程度か。
  • ②その中で、植物が光合成をするために必要なエネルギーはどの程度か。
  • ①−②が、地球に生きる生物が使用できるエネルギーだが、そのうち人間はどの程度を使用しているのか?

という点について、議論している論文。

 

この授業の一番のハイライトは多分、評価対象となるレポートなのではないかと思う。レポートは、温暖化、エコロジー、人間の健康の3分野について一つずつ+ファイナルペーパ。

 

ペーパーは 基本的に課題は毎回2つで、一つは単に計算問題。一つはエッセイ。

 

「温暖化」の回はすでにレポート提出があったのだが、 初回の計算課題は、

 

  • 太陽からの放射、太陽と地球の距離、地球の反射のみを考慮に入れた時の地球上の理論的な気温は何度か?
  • この気温はなぜ、現実の実感と異なるのか?(温室効果ガスが答えで、このメカニズムを説明させようとしている)
  • 地球の温度が◎◎のためには、地球と太陽の距離はどの程度である必要があるか?

もう一つはエッセイで、テーマは以下のような感じ。

 

ヒマラヤ山脈に影響を及ぼしている温暖化の問題について、その科学的メカニズムと不確実性が大きい部分を説明した上で、政策的インプリケーションを述べよ」という感じの内容。

 

これについて、授業で紹介された論文や講義内容をもとにレポートを書いていく。

 

参考に渡された論文によると、温暖化が進んでいる中でヒマラヤ山脈の一部では氷河のエリアが拡大する傾向にあるらしく、その理由の説明と、その理由を温暖化に繋げて説明すること、その政策的インプリケーションを考えていくことが求められる。 

 

ちなみに、なぜヒマラヤ山脈のような僻地を選ぶのか?ということを誰かが聞いていたのだが、その先生の答えが、

 

「大きな変化を及ぼす可能性があることは、僻地から症状が現れることが多く、大きな変化を及ぼす現象は、その原因を作ってない僻地にも大きな変化をもたらすことを知って欲しい」

 

という、ワイルドな回答で、印象に残っている。

 

 

このレポート、他のどの科目よりも時間をかけてレポートを書いたが、今日戻ってきたレポートの結果は(他のレポートは大体、平均ちょい上くらいの評価を維持している中)クラスの8人の中で、最下位タイっぽかった。

 

ということで、すぐにTAに「相談がある」とメールを送って今に至る。

 

【SIPA授業紹介】Economic of Energy

「SIPAは全然、個別の授業の紹介があんまりないよね」という貴重な指摘を受けたので、自分の頭の整理も含めて、まとめていきたい。

 

今学期の授業は今のところ、比較的に満足度が高いものが多いのだが、自分の経験と重なる分野でもある「Economic of Energy」(エネルギー政策専攻の必修の一つ)が、一番、考えさせられる瞬間が多い授業かもしれない。

 

教えるのは、政治経済学のPhDを持っており、Environmental Defend Fundという、市場メカニズムを用いた手法で環境問題や、人の健康問題の解決手法を提案し、実行のサポートをしている組織で、エコノミストをしている先生。キレキレな感じ漂い少し近寄りにくい印象があったが、メールは確実に24時間以内に帰ってくるし(TAにもそれを徹底している)、授業中の微妙な質問にも的確に返しているので、プロフェッショナリズムを感じる。

 

授業は毎回、「ビッグイシュー」が投げかけられ、それに対する答えの材料になりそうな経済学のツールであったり、考えが紹介されていく。授業の課題は、その質問に対する回答を関連する論文も読んでレポートにまとめること。

 

例えば、以下のような課題が投げかけられる。

  1. How do world market react when U.S oil consumption changes?
  2. Are we running out of oil?
  3. How to explain the 2007-2008 oil shock?
  4. Why don't we all use CFLs and drive hybrids?
  5. Can environmental policy lead to more poluution?
  6. How should we pay for demand response?
  7. What is the optimal carbon price?
  8. Where to from here? What does economics have to do with it?

 

4回目についていえば、有名なマッキンゼーのレポートで、省エネ機器を、CO2の限界削減費用が安い機器から順に並べたグラフが冒頭で示され、「なんで、経済的メリットがある省エネ機器もあるにも関わらず、その普及率は低いのか?」と、質問が投げかけられる。

 

これに対して、現在価値の考えをレビューした後に、予算制約の可能性、人々の認識能力の欠如、近視眼的な個人を仮定した割り引き率等が紹介され、これらに対して、現在、議論されている政策の内容(ピグー税、省エネ基準のようなもの)や、それらがどのような条件なら経済学的に正当化できるか、できないかが議論されていく。

 

最後に、「ここまで課題が分かり、有効な政策等の議論も進んでいるのに、なんで、それらは導入されないのか?」といった疑問が投げかけれ、授業が終わる。

 

一見すると自分で計量分析するわけでもなければ、実践的にどこかの国の制度等に詳しくなるわけでもないので、実践的でないように聞こえるし、そういう批判も聞く。

 

だが、個人的にはエネルギー政策に携わるのであれば、一度は考えを深めておいた方がいいと感じる質問が多い。知っていれば、シンクタンクや学者の方と議論する時に、より建設的に議論ができたのではないかと感じている。

 

ちなみに、最初のレポートを出す前に、ドラフト段階で先生にコメントを求めたところ、「良くまとまっているけど、もっと改善できる。特にまとめるだけじゃなくて、自分で考えたことも書いて」という修士2年目とは思えないコメントをもらってしまって、夏休みボケと時差ボケから一気に冷め、アカデミックモードに突入した。